Ⅳ.精度管理(1):品質保証体制

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Ⅳ.精度管理(1)

精度管理とは、測定(分析)上の精度の管理を意味し、内部精度管理と外部精度管理に大別できます。内部精度管理により施設内の精密度を管理し、高い精密度を維持し、そのもとで、諸団体が行う外部精度管理調査に参加して、他施設の測定値との比較をすることにより、自施設の検査値の信頼性を確認する流れが多くの施設でとられている一般的な精度管理方法です。また、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が認める標準法に基づいて値付けされた標準物質を測定し、その信頼性の高い表示値との一致性から正確度を確認する方法も行われています。

1:内部精度管理

臨床検査において、ある機器と試薬を用いて同一検体を繰り返し測定したときのバラツキの度合いを再現性、あるいは精密度と言います。日常的には精度管理試料と言われるものの同一ロットの試料を対象に、測定毎に繰り返し被検者検体と同時測定し、日内ならびに日間の変動幅の管理をしています。このように施設内での測定値のバラツキの度合いを管理する手法を内部精度管理と言います。内部精度管理は、上記のように精度管理試料を用いる方法と、測定された被検者の検査値そのものを利用する方法に大別できます。

精度管理試料を用いる方法

1. X - s - R管理図法、X - R管理図法、XあるいはX管理図法

X : 日内に同一試料を繰り返し測定した値の平均値の変動
(月間あるいは長期間変動)

Rs : 前日の測定値と当日の測定値の差の変動(日間変動)

R : 日内で複数回測定したものの変動(日内変動)

これらの方法は、連続量で表す定量法の場合の代表的な統計学的精度管理方法として行われています。

X - R管理図法は、X管理図で長期的な変動、R管理図で日内変動をみることができ、2枚の管理図の組み合わせにより、同一行程上でのバラツキと長期的な変動を管理することができます。臨床検査の精度管理といえばX - R管理図法を思い浮かべるように、定量法における一般的な精度管理方法です。

X - R管理図法は、X - R管理図に、さらにRs管理図で前日との比較でみる日間の変動を加え、バラツキの要因を3段階で把握できるようにしたものであり、短期的な変動から長期的な変動を管理することができます。自動分析法が普及し、精度管理試料の測定情報量(回数)が多くなったことへの対応としてコンピュータ処理のもとでこそ可能な方法です。 
精度管理試料は、系統誤差と偶発誤差を見分け、より精度の高い管理を行うために、2種類以上のものを一般的には使用しています。

2:クロスチェック法

複数台の装置を使用している場合の検査データの一致性を確認するために、同一検体を当該装置で測定し、その装置間のバラツキを把握し、改善に努めています。

3:既知濃度(単位)試料の同時測定法

既知濃度(単位)試料を被検体と同時測定して、その試料の表示値との一致性を比較します。
主に処理件数の少ない項目や定性検査項目に利用しています。

受診者試料の検査値を用いる方法

次のような被検者試料の検査値を個別にペーパープリント上あるいはコンピュータ画面上でチェックします。
その後、再検査等で確認し、必要に応じてコメントを付記したり、修正を行って報告しています。

1. 前回値チェック法
同一被検者が、繰返し検査を受けたとき、前回までの5回分の検査値を列記し、そのうち前回と今回の検査値を比較し、その差が設定値を超えた場合、再検査等により確認を行っています。

2. パニック値チェック法
予め定めた測定値を超えた場合、再検査等により確認を行っています。

3. 項目間チェック法
同時測定した関連ある項目を、同じあるいは異なる方法で2回測定して、乖離を認めた場合、再検査等により確認を行っています。

4. ダブルチェック法
同じ被検体で同じ項目を、同じあるいは異なる方法で2回測定して、乖離を認めた場合、再検査等により確認を行っています。

5. スキルアップのための症例検討会
細胞診検査に係わる細胞検査士がそれぞれ独自に判定し、その結果をもとに検討会を開催します。